メイプル

自然からの贈り物の項でスプルースとメイプルについて軽く触れましたが、ここではメイプルを取り上げます。

ヴァイオリン手に取り、ヴァイオリンの横、後ろ、ネックとスクロールに目を移すと、個性豊かな表情をした素材が使われていることが一目でわかります。
傾けたり、視線の向きを変えたりすると色合いや杢の現れ方が揺らめくように変化します。
光と影の織りなすホログラムのような変化にはうっとりとせざるを得ません。
なんと素晴らしい素材なのだろうかと思わせる通り、これらは素晴らしい素材を用いられています。

coffeeメイプルです。ほのかに淡い甘い香りの爽やかですっきりとした味わい。。。
と言いたいところですが、このメイプルシロップが採れるメイプルと楽器に用いられるメイプルは種が異なります。
メイプルシロップが採れる種は”Acer saccharum”という学名で英名では”Sugar Maple”、和名は”サトウカエデ”です。主に北米の東部に生息しています(メイプルシロップといえばケベックですね)。
余談ですが、ケベックのローカルなコーヒーの飲み方にQuebecois(ケベコヮ)というのがあり、ケベックで初めて口にしてからは、今でも真冬になると作ってしまうほど大好きになってしまいました。
作り方も簡単でカップの1/5ほどメイプルシロップを入れ、2/5ぐらいコーヒーを注ぎ、その上にホウィップクリームを好きなだけ置くのみです。
ダイアモンドダストのきらめく中で飲むケベコヮ。
素敵な雰囲気に思えますが、現実は極寒との戦いです。。どうりでエネルギー確保に必要なわけです。

メイプルは大きく分けて約9つの種を数えることができます。
そしてそれぞれがどのように製材されたかや年輪、杢の見え方によって6タイプほどに分類できます。
ヴァイオリン属に用いられるのは

学名: Acer pseudoplatanus
英名: Sycamore(英)、Sycamore Maple(米)
伊名: Acero Montano
和名: セイヨウカジカエデ、シカモア、シカモアカエデ

ムクロジ科カエデ属の落葉樹です。
シカモアという名が付けられていますが、主生地はヨーロッパから西南アジアにかけてです。ヨーロピアン・シカモアとも。

Acer_pseudoplatanus_005
Wikicommonsより / Acer pseudoplatanus

このメイプルには生育中に発生する現象から生まれる、縮み杢という独特な模様が樹木の一部に生まれることがあります。
ヴァイオリンの横側、裏側を見ると年輪に直行するようにシワが寄ったような柄や、波打っているような模様が見られますが、これが杢です。また、必ずしも杢がなければいけないのではなく、杢の比較的少ないメイプルが用いられることもあります。
杢にはいろいろな種類の杢がありそれぞれ呼び名がありますが、ヴァイオリンに用いられるものは以下の4種です。
1. 均一な細さのシワのような縮み杢(タイガーストライプとも呼びますが、虎斑とは異なります)
2. 炎の揺らめきのようなフレイム
3. 大柄な玉のようなキルト
4. そして稀ですが鳥の目が沢山あるようなバーズアイ

ほとんどの場合では1あるいは2を目にすることが多いのではないでしょうか。

なお、杢メイプルにだけ発生するものではなく、栃にも顕著に現れますし、タモやマホガニーなどにも現れるものです。また杢の種類も豊富にあります。

数多くの楽器を前にすると、この杢に目が移ってしまうこともしばしばですが、副産物的なことと捉えると無難だと思います。美観、板質ひいては音色の要素ではありますが、楽器の本質ではありません。

世界各地の見ごたえのある樹木を樹種と生息地ごとにマッピングしているウェブサイト
Monumental Trees.com
では、様々な樹木の姿と分布地域を見ることができます。投稿方式なのですべてを網羅しているわけではありませんが、ご参考までに。

シカモアメイプルの地図はこちら→Monumental Trees (Sycamore maple/Map)

ヴァイオリン作家/松江世次

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