厚さ

先日、私の楽器を演奏してくださった際にご質問をいただきました。

「薄く削っているのですか?」というものでしたがこの時はとっさに余りにも多くの事が頭の中を駆け巡り、簡潔に答えなければ!と思ったところ「どちらかというと薄い方向だと思います」と答えていました。が、実は厚みについては、しばしば思いを巡らしています。

その後もしばらく考えていたのですが、よく戴くご質問の中では頻繁に尋ねられるも事柄の1つではないかと再認識しました。これからも戴くご質問だなと思い、今現在の考えを書いてみようと思います。今後の経験によっては考え方が変わるかもしれませんので、あくまでも今現在のものということですが。。

結論からお伝えしますと、素材に合わせて適正な厚みを適正な箇所にということになります。当たり前のように聞こえるのですが、一筋縄ではいかず面白い部分です。

私の場合でのお話ですが、最初にヴァイオリンを製作した頃は板厚についての知識が無かったので、モデルにした楽器の資料に書かれているデータを基に厚みを決めていました。

数本はその方法で作ったのですが、音や響きに関して振り返ると「バロックを弾きたくなる音」という評価を得ることが度々でした。いわゆるチャンバー向きという事でしょうか。(因みに、この時期の楽器を分解してみたところ、全体的に薄すぎるというのが実感でした。自分では目指したつもりでこの厚みだったのでしょうが加工技術も未熟で支離滅裂、破綻という印象です。)

「バロックを弾きたくなる音」も悪くはないと思いますが、現代音楽では物足りないと感じ始めると共に物足りなさも募っていたので先輩方にアドバイスを仰いだり、自分なりに論文を読む日々を送っていました。

最終的には振動する箇所、素材、響など総合的に調整してゆくということが判ってから現在に至ります。実際には最終的な音や響をイメージしながらそれを目標にしてゆくわけですが、片方を触るとまた一方が崩れたりと調和を取ることは非常に難しいです。優先順位も考えなければなりません。

現在は過去に比べると音に芯を感じることができたり、倍音、残響なども十分に堪能できるものになっていると感じています。

さて、「私の作品は薄い方だと思います」ということでしたが、決して薄いわけではありませんが、余分な厚みは残していないので、結果的にこのような答えとなったのだなと振り返りました。

もっとも「ほどほど」「適切」という言葉が最適ですが、基準にバラつきがあるように感じてしまい、言葉の難しさを感じています。

 

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