トップ画像の通り、ノミで荒削りを進めていました。何も考えず(少しだけ気を使いますが)にサクサクと削ってゆくことが出来るので、とても気楽なものです。
表板のアーチはほとんど終わっていたのですが、時間をおいて何度も振り返り、「これでいいのか?」という事を確認しながら手を加えておりました。もっとも手を加えたのはエッジ周りの凹み(逆アーチ)でしょうか。アーチがスタートする部分です。
ここの深さによって表板の印象は平面的であったり、奥行きがあったりといった変化が現れます。
そして、もう一箇所、F字孔周辺(主にウイング部分)にも手を加えています。
これはフルーティングと呼ばれる加工で、ボディ中央部分と下部のアーチの切り返しを作ってウイングがより可動するようにさせる為であったり、結果としてアーチに強度を持たせることになり、F字孔による空隙にも強度を得ることが出来るようになっています。

フルーティング前はボディ中央部と下部のアーチが綺麗に繋がっていて滑らかな表面です。フルーティング後は中央部と下部の切り替わりがはっきりとするので、彫りの深い表情となります。一気にヴァイオリンらしくなる部分なので、私としては特にこだわりたい部分です。
このフルーティング、板の厚み加工を施してチューニングしてからフルーティングを施す方法もあります。私は厚みを出したりチューニングする際にもこのウイングの動きを確かめたいので厚み出しの前に、アーチの最終仕上げとして施すことにしています。
さて、このアマティ・モデルの面板ですが、高さが駒位置で19mm弱もあります。非常にアーチの高いモデルで最終的な音色の予想もたっていますが、改めてフルーティングを施してみるとその高さに我ながら驚きました。
ストラディヴァリやグァルネリなどの表板は16mm前後が一般的です。そのためフルーティングの深さもそこまで深いものにはなりませんし、フルーティングが目立つものでもありません。それが3mmでも高さが増すとフルーティングがより深くなり、非常に立体的になりました。

フルーティングを終え、ほどほどに綺麗に整えれば、厚み出しに移ることができます。ノミでとにかく削るのみ。

部分的に厚みが異ならないように、均一な厚みになるように削り出してゆきます。
まずは4mm前後を目標に厚みを作ります。その後はチューニングが関係してくるのでより、慎重にならなければなりませんが、その前段階はサクサクと削ることができて気楽でもあります。
荒削りをしている側ではウィトルウィフスが木屑で遊んでいました(笑)