アンドレア・アマティ1573″Payne”ですが、役者が揃いました。とは言ってもボディについてですが。

過去のブログ記事の画像にもいくつか登場していますが、私のヴァイオリンの基礎となるモールドは内型を使用しています。上の画像を観ると気付く方は「外型から外したのかな?」と思われるかもしれません。
モールドの種類
モールドには内型と外型があり、内型はリブの内側を基準とするものに対して外型はリブの外側を基準とする違いがあります。
内型
内型は手工で採用されている割合が非常に高いといえます。
内型の周りにリブが出来上がり、裏板を接着した後にモールドを取り外す手法が一般的です。
外型
外型はリブの外側を基準とするため大量生産に向いており(仕上がり形状のムラが抑えられるため)、内側からは各ブロック材を固定させるためのつっかえ棒が用いられ、型から外すと上の画像のようになります。
ここで話題は遡ります。私は内型を採用していますが今の所、裏板接着後のモールド取り外しは採用していません。
内型なのに裏板の接着前にモールドが外されている理由
理由はリブの形状をしっかりとさせたいという優先事項のためです。
どういうことかと説明すると、裏板接着後にモールドを取り外す場合には表板側のライニングは接着されていてはいけません。なぜなら、そのライニングが障壁となりモールドを取り外せなくなってしまうからです(これを解決させるために分解式の内型というのもあります)。そのため、表板側のライニングはモールドを取り外した後に接着せざるを得なくなります。この時点でスムーズに接着することが出来れば問題は一切ありません。現実に多くの製作家がこの手法を採っていますし、トラブルもありません。
しかしライニングの取り付け、接着の状態によってはリブに歪みが生じる場合もないとは限らないわけです。それは膠という接着剤が木材の収縮を引き起こすためです。
この歪みの問題を避けるため、或いは抑えるためには内型が取り付けられている状態で裏板側と表板側のライニングが接着されていることが理想的だと考えています。
それというのもモールドが基礎となり、ライニング接着時に起きる裏板側と表板側のメイプル材の収縮が同レベルとなるからです。
この観点から、裏板を接着してモールドを取り外し、その後に表板側のライニングを接着するのではなく、裏板側と表板側のライニングを接着した後にモールドを取り外して裏板と表板を接着するという手法を採っているわけです。
問題点
では、この手法が最良かと尋ねられれば答えは曖昧なものとなります。なぜならモールドからリブを取り外す難易度は上がり(下手をするとリブを損壊してしまいます)、なおかつリブを裏板に高い精度で接着することの難しさがそこにはあるからです。
モールドが取り付けられたリブは変形しないので裏板を接着するときには、容易に高い精度で接着させることができます。ズレることなく裏板を接着できるというメリットがあります。
これに対して、モールドから取り外したリブは裏板側と表板側にライニング材が接着されているとはいえ、柔軟で繊細なので裏板を接着する際には注意を怠るとズレが生じてしまいます。手順とコツさえしっかりしていれば問題なくこなせることではありますが、このズレの可能性がこの手法のデメリットです。
一長一短
内型を外すタイミングが何れにしても、注意すべき箇所に注意と努力を注げば仕上がりは同じです。最終的にはどちらが自分にとって製作しやすいのか?ということに落ち着くわけですね。
個人的には「内型が外されたリブ」という景色が好きでもあります。
ヴァイオリン製作は色々な方法があり、試行錯誤の連続ですし今後新たに、より合理的な手法が出てくるかもしれません。
ちなみに、このリブを完成させてからモールドを取り外す手法はミラノ式です。上述した分解式の内型はドイツ式と呼ばれています。
ミラノ式の場合は薄い内型ですが、ドイツ式の分解タイプの内型は機構が組み込まれているため厚みがあります。この内型の厚みについても個人的な拘りがあり、分解タイプの内型は採っていません。もちろん厚みのある内型の方がリブの取り付けについては容易になりますし、薄い内型はリブ取り付けの難易度が上がります。またの機会があればこの点についても取り上げたいと思います。
