昨日はパーフリングの溝を彫る準備まで行いましたので、今日はパーフリングを接着することができるようになるまでの工程となります。
パーフリングの先入れと後入れについては前回書いた通りで、今回は後入れとなります。溝の深さが求められない状態なので気分も比較的穏やかです。
深さが求められる先入れの場合は溝を深く彫る必要があるので溝の垂直度を保ちながら彫り進めるのはなかなか精神力が必要です。それだけ、浅くても良いということは気分的にも技術的にも楽観的になれるものですね。
昨日、研ぎで準備しておいた溝彫り用のツールを使います。
正式名称はわかりませんが、細い溝を彫るには最適の形状をしています。購入時のままでは刃先の幅が広かったので、おおよそ1.1mmの幅に整形しています。
ヴァイオリンの場合ではパーフリングの幅が1.2mmなのでわずかに細くしてカーブの溝も掘りやすくしています。それでも急なカーブは慎重さが必要とされます。
溝掘はどこからスタートさせるか決めてはいませんが、なんとなく緩やかなカーブから掘り始めている感じです。
溝彫りで一番の難関はコーナー部分だと思います。カーブが急になっていることと、角度の違うカーブが合流するところで、下の画像で赤く丸をつけた部分が最も鋭角な部分なのですが、少し手を滑らせたり、溝の切り込みが不十分だと繋がっている繊維ごと彫り込んでしまい、この鋭角部分を切り落としてしまいがちです。
ここはエッジ付近で傾斜のある箇所なので、パーフリングを先に入れる場合はなんとか修復することが可能ですが、後入れの場合はアーチが出来上がっていて、傾斜もほとんど仕上がっているのでミスは許されません。
このコーナー部分4箇所を終えて、ボディの周囲に溝が彫られました。
ひと段落ついて、次はパーフリングの準備です。
まっすぐの棒なので、各湾曲に分割して事前にある程度曲げておきます。ついでに溝への収まり具合も確認しつつ。私は6分割しているのですが、4分割にする方法や8分割にする方法もあります。
ちなみに8分割の方法ではコーナーの合流ポイントの仕上がりの綺麗さがより確実にすることができます。その反面、分割部分を綺麗に繋げることが代償として求められます。
溝に問題がないことを確かめて、パーフリングを湾曲に合わせてじっくりと曲げてゆきます。脆い素材なので熱を加えすぎたり、急な力を入れたりすることができません。かといってじっくりと熱を加えすぎると接着剤が溶けて素材の黒い部分と白い部分が剥がれてしまいます。
ほどほどの加減で、湾曲に合わせ、各パーフリングが綺麗に合流するようにコーナー部分をカットして整えます。
次は接着ですが、実はこの接着時に今の状態を保つことが難しいと感じます。
薄めの膠を使用するのですが、溝とパーフリングは水分を含むと膨張するので今以上にきつくなるわけです。かといって今の段階で緩い溝だと最終的な仕上がりに問題が生じてしまうので感覚的な部分ですね。
少し緩い状態であれば、膠によってパーフリングが膨張して溝にぴったりにはなるのですが、結果に確信が持てないので接着前の時点でぴったりを目安にしています。
パーフリングがない状態のボディとパーフリングが入った後を見比べると、まるで額装したかのような雰囲気になるのでとても好きな工程です。