パーフリングの埋込とヴィオラの準備

最近は雨模様が続いて湿度もあるせいか、さっぱりとした「秋」を感じられませんが、この天気が終われば秋本番でしょうか。楽器製作も秋から気分が盛り上がり、春先にクライマックスを迎えるような感じもします。

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昨日までに準備しておりました裏板側のパーフリングを溝に膠を流して接着させました。まずは仮止めしていたパーフリング材を溝から外します。

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この溝に膠を流し込むのですが、幅1.2mmと狭いので筆などでは綺麗に流し込むことが難しい場所です。そのため、別の方法ではパーフリングの仮止め状態から表面に膠を塗りこむという方法もあるようですが、私はシリンジを使用する方法が好みです。

針の先端が尖っていない注射器です。この中に薄い膠を吸い込ませ、針で溝に膠を流し込みます。

膠の濃度についてですが、ここは軽く接着させられれば良いことと、作業性の都合で流動性のある濃度が良いという感じがしています。

目安は注射器で難なく吸い込める濃度と言えるかもしれません。膠の濃度が高いと粘着性も高まり、注射器では吸い込めません。またわずかに吸い込めたとしても無理に押し出すと空気圧で針部分が飛んでしまい、勢いで注射器内の膠がそこら中に飛散してしまい、悲惨な結果となります(何度か経験してしまいました、、)。

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濃度を確かめながら湯煎のお湯を吸い取って少しづつ薄めて、軽く吸い込めれば準備万端です。溝に流し込みます。

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時間が経つとメイプル材が水分を含み、溝の幅が狭くなるので手際よくボディ中央部の湾曲とそこに合流するコーナー部分をしっかりと合わせて位置を決めて、しっかりと奥まで押し込みます。

中央部とコーナーが埋まればボディ下部と上部の湾曲に移ります。ここはコーナー部分を先に埋め込んでいるので少し浮かせた状態で針を溝に沿わせながら膠を流し込んでゆきます。

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パーフリングの埋込が終われば乾燥させて固着するまで待ちます。この後、飛び出ている余分なパーフリング材を削り落としてボディ表面の仕上げとなります。ひとまず、現状ではコーナー部分も綺麗に埋まりました。

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数時間で接着されますが、急いではいないのでヴィオラの準備として製材を行いました。

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素材は台形の直方体なのですが、これを挽き割りで綺麗に分割しなければなりません。バンド・ソーという電動工具があるのですが私は持っていないので、手作業での分割となります。毎回、「次の製材ではバンド・ソーを購入しよう」と決めるのですが、分割を終えると設備投資するほどでもないかなと考え直して今に至っています(バンド・ソーを使えば10分もかからない作業なのですが、、)。

手鋸で綺麗に挽き割りすることは「力仕事」に加えて「カットライン」を常に意識しなければならず、本当に泣きたくなる辛さなのですが、数時間で終えられることを考えれば根気も続きます。

木材の各辺に中心線を引いてその線の通りに切れば良いのですが、長さがあるので直線を保つことが非常に難しい部分です。

僅かでも鋸の刃の角度が傾くと、そんな「小さな傾き」も蓄積されて軌道修正が出来なくなり、直線に切り分けることはできませんし、何より貴重な木材が生かされません。

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ではどのように切れば確実なのかということを本気で考え、解決策を見出したのは随分と昔ですが、そのおかげでバンド・ソー設置費用を節約できているのかもしれませんね。

つまり、刃の角度が傾かない工夫をすれば良いだけの問題なので、細い棒材でガイドを取り付けることに考えつきました。鋸の刃幅を勘案して中心線の両側に棒材を接着し、そのガイドの間を切ってゆくという方法です。

下の画像では木端の接着剤が取れてしまい、その部分だけガイドが取れてしまいましたが、十分に切り込みを終えた後だったのでそのままにしています。

また、この木材は端に「節」があったのか、樹木の中心側が少し切り落とされていました。そのため、木材の形状に合わせてガイド材を曲げて接着させました。出来るだけ入念に準備を整えれば精度も高まると感じます。

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とりあえず、刃を動かせば少しづつでも切れているので、根気よく丁寧に切り分けます。時々ライトを透かせて進み具合を確認したりしますが、一番達成感を感じるのは切り分けられた瞬間です。

ガイド材の存在に感謝です。

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鋸の刃の幅は3mmですが、いろいろな方向から切ってゆくと少々のズレが生まれて1~2mm程度の段差が出来てしまいます。この面は楽器の表面側となり、アーチ加工される面なので、このまま放置していても良いのですが、各工程で美しさを感じたいので表面にカンナを掛けて気にならない程度まで段差を落とします。

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役目を終えたガイド材は取り外します。

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分割という難関を越えた後なので鉋掛けも気分上々です。

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その時々の作業内容でBGMを変えたりしているのですが、落ち着きたいときはピアノやチェロ・コンチェルトだったり、気分を高めるときはヴァイオリン無伴奏だったりします。

この鋸作業の時は、単純作業で力もいることからハードロック系を聴くことが多いのですが、今回はドイツのポップスをずっと繰り返していました。ハードに鋸を動かすよりポップな感じで軽やかに動かす方が捗りました(笑)。

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Annett Louisan(アネット・ルイザン)ですが、どの曲も雰囲気やヴォーカルが優しい印象で、レトロ・ポップで可愛らしいところが好みでよく聴いています。その中でもお気に入りはシンコペーションが心地よく、単純明快な曲調の”Drück die 1″という曲です。

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快楽主義=パートタイムヒッピー=というアルバムから

♪Ba ba ba ba ba Baraba という感じでキャッチーさが気持ち良く、途中の転調も良いアクセントになっています。

PVで電話交換手に扮しているのがアネット・ルイザンで、この曲のタイトルは「1をダイアルしてください」という感じでしょうか。

歌詞を要約すると

間違い電話ではありません、私に伝えたいことがあれば1をダイアルしてください

私はいつもここにいるので、もう一度関係を戻したい時は2をダイアルしてください

私が今何を感じているか知りたかったり、もう一度信じて欲しい場合や、あなたへの気持ちを知りたい場合は0をダイアルしてください

あなたがゆっくりと休める大切な人がどこにいるのか知りたい場合や、あなたがどこに行けば良いのかわからない時は交番まで迎えにゆくので4をダイアルしてください

新しい奥さんとトラブルがあったり、財産がなくなったり、髪が白髪になって寂しくなった場合は8をダイアルしてください

何かお願い事があったり、寄り添って欲しい場合は赤電話からとりあえず何かダイアルしてください

という感じなので、PVの流れも面白い感じになっていますね。意味よりノリの曲ではないでしょうか。

転調前の「デュッディ ノル」という部分が好きです。

曲中のヴァイオリンがシンコペーションとは対照的で良い感じ!と思っていたのですが、この曲のオーケストラ・ヴァージョンもありました。こちらは音楽番組からですね。

製作記事だけでは変化に乏しいかなと思い、少し脱線させてみました。

 

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