メディチのモールド(内型)

雨が続いていると思えば、次は台風ですね。娘の遠足が2回延期になるというありさまです。

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先日、メディチのテンプレートを製作したのですが、コーナー部分に満足を得られず改めて作り直しました。

下の画像で左側が失敗のテンプレートで右側が作りおなしたものです。

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コーナーの先端の向きと長さに違いがあるのですが、テンプレートはアウトラインに関係する非常に重要な役割を持っているので妥協はできません。

このテンプレートからモールド(内型)を起こします。普段はMDFという木材の粉を接着剤で固めた板材を使用するのですが、サイズが大きくなると平たい板材がなかなか見つからないのが実情です。硬さもあって反りにくいので気に入っていますが、ヴィオラの幅に合う反っていないMDFがなかったのでファルカタ材という柔らかめの素材を使用しました。バルサ材ほどではないですが非常に軽量で取り回しが楽です。その点で耐久性に不安は残ります。

テンプレートを固定してアウトラインを印付けて、ブロックの取り付け位置やクランプで固定するための穴の位置を決定します。

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遠目で眺めてみて良いと感じられれば切り出します。

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クランプの固定穴は直径30mmのドリルを使用します。鉛筆と比較すると巨大ですね。

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モールドの素材が柔らかいので先にクランプ固定穴を開けることにしました。モールドを切り出してからだと板をしっかりと固定することも不安定になりますし、この板材の耐久性に不安があるので四角い状態のうちにと考えた次第です。

30mmの穴となるとドリル先端の摩擦も大きくなるので少しづつしか穴を開けられません。強くドリルを当てるとモーターが止まってしまうくらいです。

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固定穴が開けられれば切り出しです。大まかに切り出してからヤスリでテンプレートのラインに合わせてゆきます。糸鋸盤でアウトラインギリギリを綺麗に切ることができればヤスリ掛けの労力も抑えられるのですが、少しのブレで台無しにしてしまうとこれまでの作業がフイになってしまうので余裕を持って切り出しました。

モールドの上下と各コーナー部分はブロックを取り付けるために切り落とすのですが、モールドのアウトラインを整える時にはこのコーナー部分は残した状態で作業します。

コーナー部分の曲線はブロックが取り付けられる位置でカーブが切り返されています。コーナーを切り落としてからアウトラインを整えようとしても、このラインの繋がりは出せません。どうしてもいびつになってしまうので、コーナーのラインを確保するために必要となります。

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仕上げのヤスリ掛けをしていると荷物が到着しました。ラーセンのヴァイオリン弦、イル・カノーネの再入荷です。オンラインストアで在庫調整しましたので現在は”ミディアム””ソリスト”どちらもご購入いただける状態となりました。華やかさがある高音ですので、機会がありましたら是非お試しくださいませ。

※購入ボタンをクリックすると画面がオンラインストアに切り替わります。

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現状ではアウトラインの滑らかさが足りないので、時間をかけて仕上げに取り掛かります!

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追記:

時間的に少し余裕があったので、エッジの整形を行いました。やはり気になると夜を越せません。

モールドの下に端材を敷いて、その上にテンプレートを固定したモールドを設置します。こうすることでモールドの底面も上面と同じようにヤスリを掛けることができて直角に仕上げることができます。

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ここで使用するヤスリは丸棒にサンドペーパーを巻きつけたものと四角いブロック材にサンドペーパーを貼り付けたものです。指の腹などを使ってしまうと太鼓状の仕上がりとなり手際によっては横板を取り付ける際にズレが生じる原因となります。

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ストラディヴァリのモールドを見れば、使い込まれた結果として表面と裏面のエッジ部分が磨耗し、角が取れている様子がわかるのですが、個人的にはモールドを作成した時から敢えて僅かに角を取って加工しているようにも見えて仕方がありません。

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使い込まれた様子を感じさせられるストラディヴァリのパターンG

角を取ってなだらかにすることで、横板の取り付けは若干の不安定さからコツが必要になると思いますが、角を取っておくことでライニング(横板の内側に沿わせる補強材)を表板側と裏板側へ同時に接着してからのモールド取り外しが容易になりそうです。箇条書きにすると以下の順番となります。

  • 横板を型に接着したブロック材に接着
  • 裏板側のライニングの加工と接着
  • 表板側のライニングの加工と接着
  • このリブを基にして裏板と表板の作成
  • 表板と裏板の完成後、横板からモールドの取り外し
  • 裏板の接着
  • 表板の接着

この順番はストラディヴァリの生きた時代であるバロック楽器の作り方に基づいたものです。

バロック楽器との違いはリブが出来上がった時点でモールドを取り外してネックを取り付けるかどうかという点です。バロック楽器はネックを先に取り付ける順番なのでリブを前半で仕上げています。その際、表板側と裏板側にライニングが付いていなければ形状を保つことが出来ないわけです。

このようにライニングを表板側と裏板側へ同時に接着すると横板の形を固定させることができるので、表板と裏板のラインの決定が比較的にですが綺麗に整います。

このためにもモールドの角を少し落としていたのかなと想像したりします。実際にはモールドの角が直角でも難なく取り外せるのですが、角を取っておくと取り外しのスムーズさが良くなる気もします。

なお、現代の一般的な順番は以下の順番が挙げられます。なおそれぞれの順番は状況や手法によって左右されます。

  • 横板を型に接着したブロック材に接着
  • 裏板側のライニングの加工と接着
  • 表板と裏板が完成すれば裏板を先にリブへ接着
  • 裏板が接着された状態からモールドの取り外し
  • 表板側のライニングの加工と接着
  • 表板を接着

この場合は裏板が固定された状態で表板側のライニングを取り付けるので、手際によっては表板側にゆがみが発生してしまう可能性があります。その場合は裏板のアウトラインと表板のアウトラインのバランスが崩れてしまいますし、パーフリングを先に入れている場合だと、アウトラインの形が決まってしまっていますので裏板のアウトラインに合わせて表板を削るという対処にも融通がききません。。バロック期から進化した方法ですが、背景にはツールの進化に伴った加工精度の高度化もあると感じます。アウトラインの確保とリブの精度が高いという前提では理にかなった方法ではないでしょうか。

このように色々と想像したり、思いを巡らせることも休憩中の楽しいひと時です。

ストラディヴァリがモールドの角を僅かに落としていたと感じるもう1つの理由があるのですが、それはまたの機会に。

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話題はそれましたが、丸棒と直方体のサンディング・ブロックで仕上げてゆきます。個人的な志向なのですが、作品を加工する時にはグローブを着けるように心がけています。

手や指の保護という側面もあるのですが、第一には作品を汚したくないからという理由です。表面の汚れはサンディングで落とすことは出来るのですが、繊維に染み込んだ汚れは無理に取ろうとするとアーチの形を変えてしまうことに繋がるので、最初から汚さないようにしています。

直方体のサンディングブロックは膨らんだ曲線部に有効です。
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曲線のRが強いところは丸棒のサンディングブロックを使用します。

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アウトラインを出せればモールドの完成まであと一息です。アウトラインが決まったので、あとはモールドのブロックが取り付けられる部分を切り落とすだけです。

ひと段落ついたので、このメディチに使用する予定のメイプル材にモールドを当ててみました。横板が1mmほどの厚みなので、エッジのはみ出し部分4mmを加えた5mmの余裕が欲しいところです。

ではこの場合はどうでしょうか。少しドキドキしました。

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メイプル材の端からモールドのエッジまでちょうど5mmでした(上画像の拡大部分)。ここはメイプル材の切り出し時に要注意な箇所ですね。危うくこのメイプル材が使えないところでしたが一安心です。。

 

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