パーフリング、スライダー、ネック材など

クリスマスは良いお時間をお過ごしになられましたでしょうか?

このブログをお読みいただいている皆さまはいつも芸術に身をおかれていると思いますが、芸術の秋をすぎると一気に年末ですね。

それぞれ一つの更新をと考えていましたが、パーフリング、弓のフロッグのスライダー、ネック材と一度に更新です。。。

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最後に製作に関する記事を書いたのはいつだったのか忘れるほどブログ更新をしていませんでしたが、写真も溜まってきたことや年末年始で一区切りということもあって久々の更新です。

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パーフリング
まずはパーフリングの溝彫りからスタートです。前回はヴィオラのパーフリングを軽くご紹介しただけでしたので、ヴァイオリンのパーフリングのご紹介を兼ねてパーフリングの機能についてです。

表面のアーチに繋がっている凹み湾曲が9割ほど仕上がっているので、パーフリングの溝が浅くても良いと考えてしまいがちですが意外にも深く彫ります。エッジ部分の厚みは3mm強から3mm弱の傾斜になっています(場所や板材の性質にも左右されるので一定ではありません)。

ここにパーフリングを象嵌しますが、やはり深さ2mm程は必要だなと実感します。つまり1mm弱ほどの厚みを残して溝を彫りあげることになります。

最終的には膠でパーフリング材を接着して埋めることとなるので強度の心配はいらないと感じます。何よりもパーフリングの機能を発揮させるためにはこれくらいの深さで象嵌していなければならない訳です。

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パーフリングの役割

パーフリングの機能とは、簡単に書くと「割れ防止」となります。ボディの輪郭をしっかりと引き締める美観的な効果を持つと同時にエッジに加えられたヒビをパーフリングで遮ることでボディの内側にヒビが入る事を防いでいます。

上の画像では表板を例として挙げています。特にスプルースは少しの衝撃でも年輪に沿って割れやすいので想像しやすいかと思いました。いくら大切に扱っていてもボディの外側(エッジ)を何かに当ててしまう事はあり得てしまいます。

パーフリングがない場合の例ですが、例えば1の矢印のようにヒビが入ってしまったと考えた場合、年輪に沿って2の線のようにボディの深くまでヒビが入ることもあり得ます。

そのようなアクシデントを防ぐため、一旦、エッジ付近で年輪に対して横方向に溝を切り、年輪の繋がりを切断させている訳です。そこに横方向に象嵌を施すことでエッジ側にヒビが入ったとしても亀裂は象嵌より奥には進みづらくさせている仕組みです。

この仕組みを考えると溝は彫れる限り深くした方がパーフリングの効果を発揮させられるように感じます。

浅いパーフリングだと、パーフリングの下ではパーフリングの外側と内側がしっかりと繋がっていてしっかりと分断できていない状態なので内側にまで亀裂が進みやすい気がします。

最初は2枚刃の罫書きツールで印づけを。刃と刃の間が1.2mmでパーフリン材と同じ幅になっています。

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この印に沿ってナイフを深く入れて溝の切り込みを入れてゆきます。ナイフの刃が脱線しないように気をつけつつ、しっかりと力を入れて切り込むので集中力が必要です。

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木釘の部分は半分がパーフリングに埋まります。表板の場合はテールピースで隠れてしまいますしナットの設置によっては見えなくなってしまう場合も。。ですが表板をオープンされる場合には木釘の存在を気づいてもらえるようにしなくてはなりません。気づかずに開けようとすると割れの原因になってしまいます。

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罫書きツールではこの合流点を切ることができないので下書きをしてフリーハンドで切り込みます。

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しっかりと切り込めるように刃を逆に向けて切り込んだりと活用します。

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ナイフの刃がどこまで入り込むかを計り、目指す深さまで切れている事を確認してから溝部分を彫り出します。

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この溝彫りをスタートするとパーフリングが象嵌されるまで気が気でなくなるので写真を撮りはぐりました。。

仕上がりはこのような感じです。残すはエッジの面取りや表面の仕上げのみとなっています。

表面を触ったり、ワークベンチに置いたりする度に増幅された音が出てくるので楽しみです。このような状態でもスピーカーの音に共鳴して振動するので面白いものですね。

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スライダー
話題は変わり弓についてです。先日は毛替えの際にフロッグのスライダーを交換しました。チェロの弓で数十年経過しているとのことでした。スライダーのシェル(貝)部分が貝殻の層に沿って剥がれ落ちた様子です。

もしかすると私が子供の頃から現在までの使用で見せてくれる表情なのかもと考えると感慨深いです。

スライダーの下のエボニー材が顔を覗かせています。

 

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スライダーを外した状態。スライダーとフロッグのすり合わせに何度もスライダーを入れたり出したりしていると毛が痛んでしまいますので毛替えの前に新しいスライダーを作ります。

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新しいスライダーとなる貝とエボニーです。

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このままでは貝の幅がフロッグに合わないので、フロッグに合わせて削り落としてゆきます。

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最後までしっかりと差し込める状態にします。

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貝の幅が決まればエボニー材を少し幅広で準備します。

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接着ですが、気楽なのはここまでです。

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フロッグに作られているスライド溝に合わせて厚みを整えます。ある程度の厚みまで整えてからは少し削り、合わせてみるという作業の繰り返しです。

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頻繁なすり合わせを経て仕上がったスライダーです。フロッグが最初の頃とは違った表情ですね。

これからまた長い時間を過ごしてもらえると考えれば、関われたことに嬉しさを感じずにはいられません。

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ネック材
ボディのエッジに面取りを施したので、ネックの製作に移りました。
まずはネック材の下準備からです。

これはヴィオラの裏板と同じ木材から採られたネック材です。ヴァイオリンも裏板と同じ材から採られたネック材を使用しています。

ネックの製材は直方体を作ることから始まりますが、その直方体を作るための基準面を作る必要があります。この材料の場合、基準面となる面に樹皮が残っているので、樹皮の下側も含めて樹皮を削り落として綺麗な平面を出します。

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ネックとスクロール部分が確保できる状態まで樹皮部分を落として平面を出したところです。一部、入り皮が深い箇所がありましたが最終的には切り落とす部分でした。不幸中の幸いといったところでしょうか。

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切り出した状態の木材は側面にあたる面が傾斜なので、この傾斜を削り落として直方体にします。

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上の画像では左がヴァイオリン用、右がヴィオラ用です。ヴァイオリンは削り落とすだけで良さそうですが、ヴィオラは当て木をしなければ直方体に出来ませんので木材を接着しています。

最終的な直方体にするため、この当て木は半分以上が削り落とされることになります。必要な部分は僅かしかないのですが、一つ一つを丁寧にしたいものです。

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水平を意識しながら、とにかく削ってゆきます。気がつくとそこらじゅうがカンナ屑だらけです。

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目標のラインまで9割程度削れれば、スコヤを使って直角を意識してゆきます。基準面に対してスコヤがピッタリと当てられるようにしてゆきます。下の画像では右側が高いので、スコヤが当たっている部分を印つけて、その箇所を均してゆきます。

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最終的にはこのようにピッタリとなります。

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両面とも基準面に対して垂直にならなければなりませんが、基準面が歪んでいると元も子もないですので、基準面は完全に平面でなければなりません。

と私は信じ込んでいました。。これに間違いはないのですが、もう一つの要素があることを忘れていたのです。それは計測器の精度です。

実はこのスコヤは今年新調したアメリカ製です。ボディと定規を自在に移動させることが出来て直角90度のほかに45度も測定できるものです。ボディと定規は焼き入れされたスチールで高い精度が維持されます。ホームセンターで販売している同じサイズのスコヤの10倍以上は掛かりましたがその価値は十分すぎるほど実感できます。

というのも、それまで使用してきたスコヤが限界を迎えた訳でした。日本製という信頼感もあって精度を疑ってはいなかったのですが、やはり長年の使用で狂いが生じ始めていたのです。完全に平面を作っていても(垂直定規で何度も確認)全く垂直が得られずヤキモキし、もしかしてスコヤに原因が?と考えスコヤの直角を測定すると、わずかに広がっていたのでした。台と定規の継ぎ目が原因でした。

それを機に、念願だったこのスコヤを思い切って導入したところ、直角出しが気持ち良いくらいに行えるようになりました。アメリカの製品なのでインチ表記が主流です。その中でメトリック表記は僅かながらも生産しているようですが、探すのに苦労しました。

おそらく、同じ品質と精度で日本製のスコヤを探すともっと高価なものになっていたと思います。測定するにおいては高精度の計測器が重要であることを改めて実感しました。

因みにこのブランドがとても気に入り、後にノギスやコンパスなども揃えることとなりましたが、仕事で重視されるモノはそれなりの対価が必要だと感じさせられています。

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たかがスコヤ(直角定規)、されど最も重要で基盤となるのがスコヤでもあります。

ヴィオラの準備が終えたので、次はヴァイオリンです。

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明日、2017年大晦日ですが、ヴァイオリンのネック材を製材してから全ての刃物を研いで新年を迎えたいと思います。

皆さまにおかれましても、どうぞ良いお年をお迎えください!

 

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