2017年10月より手掛けていたアントニオ・ストラディヴァリ 1716 “メシア/メサイア” モデルが最終調整を終え、無事に完成いたしました。
実質的にはホワイトで完成したのが昨年2017年の12月で、オイルニスとセットアップを終えたのが2018年の5月始めでした。ヴィオラと同時進行だったのでホワイトまでに掛かった時間は2ヶ月でしたが、好ましいペースだったと感じます。
表板にはイタリア・フィエンメのスプルースを使用しています。裏板・横板・ネックはバルカン材のメイプルを使用しており、同じ木材から切り出された材なので杢の統一感もよく、個人的にとても気に入っています。
今回、目指したヴァイオリンのキャラクターはソリスティックな音色と響でした。幸いにも表板・裏板・バスバーともに調整の中においてトラブルなく順調に進み、指板も含めて良い結果を出すことが出来たように感じています。
やはり、スプルースの状態がとても良かったこともあり、素材選びの重要性を改めて認識しました。具体的には音の立ち上がりや、レスポンスが好印象ということがあげられれのですが、板厚やバスバーの整形も影響しているような気がします。
ヴァイオリン製作の難しさは、「どこ」を「どのように」すれば良いのか明確な答えがなく、複合的で、各要素が天秤のように影響し合う部分かなと感じています。天秤が水平になるようにバランスを考慮し、ベストな状態に導くという大きな流れを意識させられました。
これまでは「最大公約数」的な考え方に近いヴィジョンを持っていたこともありましたが、「バランス」という理解しつつも捉えどころのなかった思考の実体験を得ることが出来たのではないかと思います。
完成から間も無いですが演奏された方々からは好評価をいただき、このヴァイオリンが正式に工房から羽ばたくこととなりました。
これまでこのヴァイオリンを撮影したのは上の写真2点のみでしたが、これらを見ると私自身は多くの事を振り返ります。今は奏者さまと、このヴァイオリンが共に素敵な音楽を紡いでゆかれる事を心から願ってやみません。
今、工房では新たな気持ちで次のモデルに取り掛かりつつあります。次はアントニオ・ストラディヴァリの内型 “PG” を使用してヴァイオリンを製作する予定です。
これまでのように各駅停車ですが、折をみてはブログにしてゆきたいと考えておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
