ストラディヴァリのツール(1)

今年もお雛様を迎えて、これから春が訪れようとしていますがいかがお過ごしでしょうか。

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ここ最近は時間があればウォルナット材の厚みを揃えています。ストラディヴァリの木型の厚みは時代によってバラバラなので各々の厚みにしているのですが10枚分となると手鉋では辛くて仕方ありません。

「ポータブル・プレナー(電動厚出し鉋)があれば」と頭を過ってしまいますが、毎日必要となる訳ではないので、そこまで設備投資をすることが躊躇われます。「それでは電気鉋は?」とも自問しましたが、これも仕上がりは手鉋には勝りません。その費用を木材に掛けたいというのが実情です。

手鉋は一度に削る厚みがとても薄いので時間が掛かります。そして毎度のことながら粉塵が悩みの種なのでこの機会に集塵機を導入しました。

何年も塵害に悩まされていましたが、結果として清潔さと快適さが手に入り、もっと早くに対応しておくべきだったと思った次第です。環境が良くなると何事においても取り組む気持ちが違いますね。

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木型の鉋掛けにも疲れてきたので、少し別の事に取り掛かりました。

ヴァイオリンのコーナー・ブロックに横板を接着するときに使う「あて木」です。いつも通りにCADで実寸大のプリントアウトから始まります。実際にはこのデータを作っているところから始まっているのですが。

ストラディヴァリのあて木はメイプルやウォルナットが使われていますが、今回作る”B”はメイプルなので端材を有効活用となります。幅・高さ・奥行きをギリギリまで追い込んで、横板に当てるR部分を削り出します。

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横板に当たる部分はRが付いています
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手前と奥が同じ高さとなるように気をつけて削ります
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全てのR加工が終わりました

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私自身では。これらの「あて木」はモデル毎に作ったり、既存の固定具に革をシムにして適応させたりしていました。ストラディヴァリの「あて木」を目にする度に「使ってみたい」と思っていたので木型とセットにするために準備する事にしました。「可能な限り実物に近いレプリカで実用的な”あて木”に」というのが今回の目標です。

可能な限りというのは、下の3点が解釈を混えなければならないので致し方ありません。

  1. どの「あて木」がどのコーナーに用いられていたかが解らない
  2.  厚みが解らない
  3.  使用する材料がオリジナルと比べて杢が強すぎる

1については自分なりの解釈を混える事になります。想像の部分なのですが「あて木」大きさから大凡の判断はつきます。問題は似たような太さの4本なのですが、”B”というモデル名の隣にコーナーの形状のような記号が書かれているので、それをヒントにしました。

2については自分が使いやすい厚みとして、3は仕方がないのであきらめます。

その他の文字や切り込みの形状、それぞれのサイズや歪さなどわかる部分は最大限に取り入れます。

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大まかに切り出したメイプル材にそれぞれの下書きを施します
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長さや端の形状も各々違うので整えます

モデル名の”B”の両サイドに点が書かれていたり、Bを挟むように縦の彫り込みがある様子を見ていると見た目にも良い感じにしようとしていたのかなと思わずにはいられません。それぞれが規則正しく作られている訳ではなく、思いつきで加工したような感じです。そのランダムさ故に人間味溢れるような味わい深さを感じました。加工していて気が付いたのですが、Bの両脇の縦筋はパーフリングの幅とほぼ同じでした。

縦の彫り込みの次はエッジの面取りです。実物と同じようにラインを引いているので、これに沿って削り込んでゆきます。

ちなみにこの部分は横板を固定する際に糸を巻きつけて縛る部分です。

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縦の彫り込みを終えて、エッジの面取りに進みます
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エッジの加工前と加工後

平面的な木片から立体感溢れる「あて木」へと変貌しました。残りの「あて木」にも同じ加工を施せば完成です。

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完成です

この「あて木」はマニアックなものですが、形状も文字入れも良い感じになっていると嬉しいです。

さて、現在展示されているストラディヴァリの固定具はゴールド色です。上の写真が完成直後のものですが。メイプルらしい綺麗なホワイトです。

このまま使うと汚れて黒ずんでしまいます。ストラディヴァリのあて木は文字も綺麗に残っており、目立った汚れもない状態なのでヴァイオリンと同様に下処理をしていたのではないでしょうか。経年変化による黄変かとも思いましたが、上述の理由に加えて、おそらく美観的な事も勘案されているような気がします。

という事で、下処理後に汚れ防止のワックス仕上げにしました。

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Counter-Parts of Corners “B”, A.Stradivari (replica)

さらに実物へ近づきました。揃えて眺めていると苦労は一気に消え去ります。作っている最中は「その場任せで作ったであろう物を削り跡まで忠実に模倣している自分」に半ば呆れていましたが、完成すると再現性を求めて良かったと思います。

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この「あて木」で重要な部分は固定面のRとヴァイオリンのコーナー部分のRが合致している事と接着作業に於いて必要最低限の長さという2点なので、その条件に合致していれば良い訳です。

ストラディヴァリのタイプの「あて木」は現代主流の工法では使わない物なので今回の製作は自己満足のためなのですが、学ぶことも多々ありました。時間をおいて資料と比較したところでは、まだ不満もありますが今回は理解を深める良いウォーミングアップになったと思います。

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木型との収納ボックスを誂えるまではオブジェに。。。

 

 

 

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