“G”モデルのブロック接着と板接ぎ

いろいろと製作を進めていますが、今回はストラディヴァリの木型”G”にブロックを接着しました。”G”の木型を作るだけのつもりでしたが、どうしても使ってみたくなったので製作に取り掛かることに。

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ブロック材の接着

そのつもりは無かったのですが、木型の仕上がりが良かったので魅惑に負けました。ボディのサイズがやや大きめなので今後も計算とシミュレーションが必要ですが、出来る事から進めてゆきます。

という事で先ずはブロックの製材です。テールピース側とネック側の高さを維持しながら、後々の工程で手間が省けるように出来るだけ近い高さを出しました。木材は小さくする事は出来ますが、大きくする事が出来ないので無理のない範囲で、丁寧なひと削りを繰り返します。

ブロックの木型に接着される面と裏板側と表板側の面の直角は必須ですが、その他の面は少し斜めになっていても大丈夫です。とはいえども、ブロックを見ていると傾斜が気になるので違和感のない程度に整えました。後々に削り落としてしまう部分なので、気にしなければ時短に繋がると解っているのですが、、。

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コーナー部分のブロック材

ネック側とエンドピン側のブロックの内側は、横板を付けてリブ(ガーランド)になって木型から外した時に整形するのですが、横板が付いていると取り回しや加工が不便という事もあり、この時点である程度まで済ませておきます。20190315-L1000053

ブロック材の余裕を持たせていたので、この時点ではかなり大きいブロックです。

ここから不要な部分を切り落とします。いつもなら糸鋸盤で済ませてしまいますが、今回は手鋸を使いました。和風と異なり洋風の手鋸はグリップの形状が独特ですね。刃の厚みがあり全体的に重めなので軽い力で切断できます。

目立てが面倒なので使うことも控え気味になりますが、剛性感と切れ味の良さは気持ちが良いものです。グリップも持ちやすいので頻繁に使いたいものです。

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構造上40mmの厚みまでしか切ることが出来ないのが残念です

切り落として、切断面を整えると適度な大きさになりました。

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切断面も直角に

ピンを10本利用して麻ひもで縛り付けます。

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良い景色です

現代的な木型とクランプを使えば手っ取り早いですが、この手法は独特の風情があります。

 

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バロック・ヴァイオリン用の鍛造釘

話題は変わりますが、先日バロック・ヴァイオリン用の釘が届きました。

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主に美術品の修復などのために生産されています

バロック・ヴァイオリンのネックとボディを繋ぐための釘で1艇の楽器に3本使います。現代では軸の丸い釘が主流ですが、釘を手作りしていた時代はこの釘のように角錐の軸が主流でした。西洋の釘と同様に日本の和釘も角錐の軸です。

この角錐軸の特徴は、丸い軸に比べて表面積が広いため保持力が一段と高いという特徴があります。現在の日本でも寺社仏閣などの建築物や家具などの復元のために和釘が鍛造されているようです。

今回届いた釘はフランスで鍛造されているもので、まさに伝統的な釘そのものです。そのため全ての釘が同じ長さではありません。平均して30mmぐらいですが、27mmもあれば32mmの長さもあったりします。こちらも修復や復元の用途として製造が続けられています。

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長さもばらつきがあり、釘の頭もそれぞれの表情があります

私としては数十本もあれば十分だったのですが、100本が手元にあります。しばらくは安泰です。。

おそらく私自身では使いきれないと思うので、必要とされている方がいらっしゃれば少数ですがお分けできますのでお尋ねください。

 

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スプルースとメイプルの接ぎ合せ

閑話休題。ブロックの固着待ちの間、表板と裏板の接ぎ合せをスタートしました。今回のメイプル材はやや小振りで、接ぎ合せても幅がギリギリです。いつも通りにすれば良いだけのことですが、失敗しないかと妙に緊張してしまいます。

最初の一歩は基準面作りから。接ぎ合せてから最終的な面出しをするので、ここでは95%程度の平面に。

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基準面が出来たところで、接ぎ合せ面を整えてゆきます。この面がピッタリと合わなければ失敗という結果に繋がるので、慎重さが求められます、特に今回は小振りな板材なので基準面との角度も考慮しなければ板の厚みが足りなくなってしまいます。

厚みに余裕があって接ぎ合せ面が正確に作れていれば、多少の角度は後々の面出しでなんとかなりますが、年輪の向きも丁寧に合わせたいので必要最低限の削りで合わせます。

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この状態から両方の板がぴったりと合わさるようにしてゆきます

今回は少しマニアックなツールを取り出してきました。基準面に対して直角を出すためのフェンス付き鉋です。家具など平らな板材を加工するには1つで事足りますが、ヴァイオリンの木材には2つで1セットが理想的です。

それぞれの違いはフェンスが右側に付いているか左側に付いているかの違いです。基準面に対して木材の繊維の向きが違うことがあるので、常に繊維の向き(順目)に鉋を描ける為に2種類がある訳です。

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真鍮のボディはとても綺麗で、機能美もあります

この鉋の特徴は直角を作るためのフェンスが一体化してしており、基準面にフェンスを密着させる事で鉋台を直角に維持しながら削ることが出来ます。フェンスにはビス穴が開けられていて、フェンスの内側に45°の木材を取り付けると45°の角度で削ることも出来ます。90°に限らず任意の角度を出せるので、多角形の箱作りなど用途は多々あります。

強力なマグネットを鉋に取り付けるタイプのフェンスや、シャフトでフェンスを保持する鉋もありますが、一体型の安心感は別格です。

また、上の画像を見ていただくと解るように、鉋本体に対して鉋刃が斜めに取り付けられているのも特徴です。一般的な鉋刃の仕込みだと摩擦力が高く、綺麗な鉋掛けが難しいものです。その対策として刃を斜めにカットして使う(スキュー刃)というものもありますが、これは研ぎで神経を使わされる上に手間も掛かります。

そこで研ぎやすい一般的な形状の刃を本体に対して斜めに仕込む事で摩擦を抑えた、軽い力でのスムーズな鉋掛けが実現出来るという事です。

正面から見ると、仕組みが判りやすいかもしれません。

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削り始める前 (基準面にフェンスを当てます)

フェンスが直角定規のような働きをし、刃が当たる部分だけが削れてゆきます。下の画像は少し削った状態です。

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削った部分が基準面に対して直角になります

これを接ぎ合せ面の幅全てに刃が当たるまで繰り返します。そうすると、自動的に基準面に対しての直角を得ることが出来ます。

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簡単に直角になるので気楽です。

ここまでは基準面に対しての面作りですが、次は長手方向の平面を作ります。ここでは鉋台の長いものを使って直線性を出してゆきます。既に角度は決まっているので、極薄い削り屑が出てくる程度に掛けてゆきます。

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「とろろ昆布」を更に薄くしたような屑です

これで接ぎ合せ面が仕上がったので、次は膠で接着です。

失敗は許されませんが、気負い過ぎてもいけないので着実に進めてゆきます。接ぎ合せ面が確りと密着している事を何度も確認してから接着し、一晩置きました。

「接ぎ合せは大丈夫」とは判っていても、必ずしてしまう事は、接合部分を鉋で削り落として接着具合を確認する事です。この確認が出来てようやく一安心。

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1枚板も素敵ですが2枚板の魅力も良いものです

無事に接ぎを終えたので、平面を作って製材は終わりです、ここからヴァイオリン製作らしい作業になります。

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サクサクと削れると心も軽やかです

 

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刷毛作り

表板と裏板の準備が整ったので、馬の毛を再利用してみました。

メイプルやスプルースの端材は何かと重宝するので出来るだけ保管しています。一方、毛替えで発生する選別後の使えない馬毛や切れ端は再利用の用途が思い浮かばず、勿体無いと思いつつも廃棄していました。

昨日、接ぎ合せで膠に使う刷毛を新しくおろして使っていたのですが、あまり費用を掛けたくないと常々考えていました。

刷毛のことが頭の片隅に残っていたお陰か、今日は分数サイズの毛替えで余った毛の束を見ていると、ふと「もしかして刷毛に再利用出来るのでは?」と思いつきました。

切れ端を纏めて束にしてみると接着用の刷毛としては十分に使えそうです。これで穂先が出来ました。毛がしなやかなので、もう少し短い方がコシが出て使いやすそうです。ただ、膠の含み具合も気になるので長さは使いながら調整しようと思います。

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直径1cm弱の束が出来ました

穂先だけでは刷毛として利用できないので、柄に使えそうなメイプル材を物色。長さと太さも申し分ないサイズです。

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思い立った時に使える端材があると、やはり便利です

穂先を挿入する部分を加工して、柄の角を面取りしました。丸い軸にしようと思ったのですが、そこまで時間を掛けるものではないので。。。

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穂先の取り替えが簡単に出来るようにしました
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杢も綺麗です

仕上げは穂先を差して、緩まないように麻ひもでしっかりと固定させます。メイプルの柄と馬毛の穂先。ヴァイオリン工房ならではですね。

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次回からはもう少し太めの穂先にします

天然素材は唯一無二のものです。これは製作においても同様ですが、あらゆる命が宿っていた素材は可能な限り活かすことを心掛けています。

 

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