平成から令和と時代が変わり、10連休という日々が続きましたが良い休日をお過ごしになられましたでしょうか?
誰もが休日というわけではないですが、代休などこれから楽しみにされていらっしゃる方も良い休日をお過ごしください。
工房での連休はあってないようなもので、娘達が賑やかに遊んでいる中、一人で工房に篭ってボディの膨らみ(アーチング)に勤しんでおりました。
ボディのリブが完成したので、メイプル材とスプルース材をリブに合わせて切り出します。
横板と裏板は同じ木材から切り出しているので、横板の杢が裏板の杢とマッチするように組み上げました。あまり気づかれない部分ですが、流れるような杢の繋がりが一体感を醸し出します。
メイプル材にリブのアウトラインをマーキングして、糸鋸盤で切り出します。多種の曲線で構成されているので、糸鋸盤の鋸歯を外したりセットしたりと手間がかかるので、最小限のセッティングで切り出せるようにターニングポイントの孔を開けます。
一筆書きのように切り出せるので、切り進める事に集中できます。
同じようにスプルースも切り出し、完成しているリブに仮付けしてアウトラインを整えます。
このヴァイオリンはモダンな雰囲気にしたいので木釘を使いません。そしてパーフリング(縁取りの装飾兼割れ止め)もアーチング前に象嵌してしまいます。
アウトラインを丁寧に整えてからアーチングに進む訳ですが、今回はいつもと違う方法でアーチングに取り組みました。
一般的にはフリーハンドとテンプレートなどを用いて丸鑿でアーチの荒削りをするのですが、最終的には等高線も考慮しながら削り込んでゆきます。
その等高線が事前に分かっているので、等高線を基準にアーチを削り込む手法を試してみました。まずはアーチを作る面に等高線をマーキングして、その等高線に従って段差を作ります。
この線は●●mmという具合に平面の厚みを整えて、段々畑のようにしてゆきます。山岳地図を想像すると判りやすいかもしれません。等高線を作った後、その段差をなだらかにすればアーチが出来上がるという魂胆です。
微調整が出来るように目標値よりも1mmほど高めを意識しながら、平鑿を鉋のように使って等高線を削りだしました。
頭で何度もシミュレーションしたものの、この状態から目指しているアーチが出来上がるのか少し不安です。
こうして眺めているとNCルーターなどの機械で準備したものの様にも見えます。
資材の買出しに出かけて帰ってくると郵便受けに不在票の束があり、その中の1枚に国際郵便というものがありました。
心当たりがなかったので、寝ぼけた状態で何かを注文したのかな?と不安を抱きつつ、再配達を待っていました。
差出人を見るとスイス人の友人からでした。不用意に注文してしまったのかが心配だったので、ひとまず安心です。。
外箱を開けてみると、ケーキが入っているような化粧箱に入ったチーズでした。手紙によると最近引越しをしたようで、その地元のチーズという事です。感涙です。
左の金紙に包まれたのがチーズで、右はこのチーズを削る器具です。
チーズも長旅をしてきたので、冷蔵庫で数日の間落ち着かせて、削り台にセット。
食べ頃を待っている間、このチーズについて調べてみると”テット・ド・モワンヌ”という有名なチーズである事、チーズを作っているところでは歴史博物館も併設されている事や削ったチーズがジロールというフランスのキノコ(日本ではアンズ茸)に似ていることから削り器がジロールという名前であることなどが判りました。どんな味わいなのか楽しみです。
チーズは密封されていたのですが、それでも香りが判るほどフルボディな印象でした。
削りながら少し食べてみると余りにも美味しくて驚きました。厚く削ったり、薄く削ったりと試しましたが、食感も変わることはもちろん、味わいにも変化が。
味はアロマから感じた通りフルボディなのですが、クセがないのでどんどんと進んでしまいます。
特に薄く削ったチーズは口溶けが良く、芳醇な香りと絶妙な塩気がミルキーな味わいを引き立てています。
私の好みの真ん中です。削り進めてゆくとコツが判り、ジロールという名前の由来となっているキノコのように削れるようになりました。
パンに載せたり、カルボナーラにトッピングしたりと今も色々と試していますが、どんな食材も一気にグレードアップするほど美味しいチーズです。とても気に入ってしまい、次に補充できるように日本国内で販売している所まで調べてしまいました。
チーズは冷蔵庫で保管できるようにプラスチックのカバーがついています。常備品の仲間入りです。
スイスを存分に楽しませてくれて、感謝しかありません。
こんなに美味しいチーズを戴いたので、お礼に日本の何かを贈ろうと考えていますが、友人の喜ぶ様子や、どんな品が喜ばれるかなと想いを巡らす時間も楽しいものです。
少し何か食べたい時に例のチーズを少し削って楽しみながら、今日もヴァイオリンを削ります。
等高線をなだらかにする前にパーフリングを象嵌しました。裏板のメイプル材には着色メイプル・ホワイトメイプル・着色メイプルのパーフリング材を。そして表板のスプルースには着色メイプル・梨材・着色メイプルのパーフリング材を使用しました。ニスの下準備で色を合わせますが、各素材の色合いに近い物を選ぶことで馴染みが良くなればと考えました。
今でこそパーフリングも苦ではありませんが、初めて作ったヴァイオリンから幾つかはコーナー部分のパーフリングが合流する部分の合わせが上手く出来ませんでした。
表板と裏板の8箇所のうち幾つかが綺麗に出来ていれば上出来だった頃が懐かしく感じますが、今でもこの合流箇所は気を遣います。
パーフリングの膠が固まり、アーチに取り組みます。等高線を崩して行くのは何とも言えない快感がありました。創造と破壊のようなものでしょうか。レゴで大作を作って、それをバラバラにする行為に似た物を感じました。実は等高線を出すのに思った以上の時間と労力が掛かってしまったので尚更です。
等高線の角を落として行くだけなので、何も考えずに進んでゆきます。とは言えども裏板と表板のアーチの形状は全く違うものなので、最終的な形を意識しつつ削っています。
等高線を作っている段階から1mm以下の誤差が積もり、アーチの高さが3mm程高くなっていたので、高さを調節しながら等高線の跡を消して行きます。意図しない刃の食い込みがあった場合に削り落とせる様に、そして最終的な微調整ができる様に少しづつ余分を作っていたので想定通りです。そしてここからはスクレーパーで地道に。。
初めて等高線からアーチを作ってみましたが、結論を一言で表せば「とても楽に正確なアーチが出来る」というものです。楽にとは言っても、等高線の段々畑を作るのは重労働でしたが、アーチの削り出しが30分も掛からずに出来上がったのは少し驚きです。もちろん全体のバランスをチェックしながら進めたのですが、アーチ全体に集中出来るのは良いことでした。
一部分を合わせるために他を削り、そこを合わせるために再び一部分を削り、バランスが崩れて行くという心配がないので気が楽でした。
続いて表板のスプルースもアーチを作ります。
こちらもメイプルと同じくあっという間にアーチになりました。
まだスプルースの高さが高めですが、表板はF字孔の配置やアーチの切り替わりのバランスなど考えなければならない部分があるので時間を掛けて詰めてゆきます。
GWの中で唯一出かけた新宿・四谷の夜の街を撮影してみました。
何でもない街並みですが、GWで人気がなかった事と空に浮かぶ暗闇とビルの谷間に灯る光が面白くて撮った1枚です。

最近はモノクロームに挑戦していて、ちょうどモノクロームについての記事を読んだばかりだったので、光と闇、濃淡のグラデーションを考えながら撮りました。
身近な撮影となると街中ばかりなので、たまには大自然の中で風景を撮影したり、レンブラントやカラヴァッジォの様なポートレートを撮ってみたいと願っていますが、そんなチャレンジの為にも日々の練習が大事ですね。