削る

ヴァイオリンのボディはスプルース、メイプルから削り出されるので「削る」ツールは必然と多くなります。

和鉋

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鉋といえば和鉋を思い浮かべますね

 

STANLEY SweetHeart / Block Plane
スタンレイ / ブロック・プレーン

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洋鉋(ブロック・プレーン)

プレーンは英語で鉋を意味し、ブロック・プレーンはブロック材を扱う小ぶりな鉋です。2つあるのはそれぞれ取り付けられている刃の角度が異なっているためです。奥が一般的な角度のオールマイティーなもので手前はロー・アングルという低い角度で刃が仕込まれています。このロー・アングルは小口を削る用途向きです。

小ぶりといっても結構重いです。一般的な刃角のものは1kg強ですしロー・アングルでも897gあります。この重量感が木材に掛かるので、しっかりと調整されていれば軽く流すだけで綺麗な木屑が出てきます。

刃はしっかりとした厚みがあり、切れ味は永く保たれます。その代わり研ぐのが一苦労ですが。

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刃(ブレード)、小さな丸が二つあるのは研ぎで短くなったときにでも固定できるようにするためです

鉋台の中に組み込まれているスクリューで刃の出し入れと角度調整を行うことができるようになっています。

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台尻のネジを回すと刃を固定する凸金具が動き、刃の出具合を調整できます

先端部は台底と分離しており、スライド調整で刃口の感覚を調整できます。和鉋は刃口が定まっているので、厚く削ったり薄く削ったりする際には複数の台が必要ですが、このブロック・プレーンは融通が効くので便利です。

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スライド式の刃口はネジを緩めて調整ができます

 

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全てを分解した様子

それなりのパーツから成り立っているので手入れに時間が掛かるものの、便利さの面で和鉋より好みにあっています。マシンのような佇まいもお気に入りポイントです。

 

Clifton / No.5 Jack Plane & No.4 Smoothing Plane
クリフトン/No.5 ジャック・プレーンとNo.4 スムージング・プレーン

No.5のジャック・プレーン
No.5のジャック・プレーン
No.4のスムージング・プレーン
No.4のスムージング・プレーン

ブロック・プレーンは比較的オールマイティーではありますが広い面や長い辺については苦手分野です。そのような場面では台の長い鉋を使用します。

No.5/ジャック・プレーンは台の長さが約35cm、2kgの長い鉋です。広い面や長い辺の鉋がけに良いサイズで起伏のある荒い面の荒削りにも役立ちます。ジャックというのは「何でも屋」的な意味合いがあり、一番使用される頻度が高いのがこのNo.5で頻繁に用いられることからついた名称だそうです。数字が上がってゆくごとに台の長さが長くなります。
メカニカルな機構で書く微調整が細やかに行え、一旦良いセッティングが出来れば高い精度での鉋掛けが楽に行えます。削る時間よりセッティングに時間が掛かってしまう事もしばしば。。
クリップ式のキャップで台と刃を留めており、刃には取り外し可能な裏金が取り付けられています。裏金だけを外すことができるようになっているので、手早い研ぎ直しにも手間がかかりません。
重量があるものの、滑らせることに集中できます。

No.4/スムージング・プレーン
ジャック・プレーンより一回り短かい鉋です。長さ約24cm、1.7kg。ジャック・プレーンでおおまかに整えた面をさらに平面にするための鉋ですが、対象物によっては最初からこの鉋でスタートする場合も。
機構はジャック・プレーンと同様です。

No.5のジャック・プレーン
No.5のジャック・プレーン

上の画像が使用する際の状態です。手前のクリップ状の金具が台に刃を押さえつけて固定しています。

キャップを外したところ
キャップを外したところ

キャップを外すと刃の取り外しができます。

刃と裏金を外したところ
刃と裏金を外したところ

刃と裏金はネジで固定されており、刃の長さに応じて移動させることができます。研ぎを繰り返してゆくと刃は短くなるので必要な構造です。

刃と裏金、分解式になっています
刃と裏金、分解式になっています

裏金は木材の逆目の部分でささくれを跳ね返すための役割を担っており、チップ・ブレーカーと呼ばれます。

このネジで刃に裏金が留まっています
このネジで刃に裏金が留まっています

刃を研ぐ度ごとにネジを緩めて裏金を外していては面倒なのでチップ・ブレーカーだけは簡単に取り外すことが出来るようになっています。下の画像の状態で刃研ぎが可能です。

素早い刃研ぎのためにネジを外さなくとも刃研ぎが行えるようにチップ・ブレーカーだけ外すことも可
素早い刃研ぎのためにネジを外さなくとも刃研ぎが行えるようにチップ・ブレーカーだけ外すことも可

刃の出し入れは一番大きなダイヤルで調整します。

中央の真鍮のダイヤルが刃の出し入れに連動しています
中央の真鍮のダイヤルが刃の出し入れに連動しています

刃の傾きはダイヤルの上に長く伸びたレバーで左右の調節が可能です。

刃に関する部分を分解した状態、まだ台についているパーツもさらに分解でき、調整が可能です
刃に関する部分を分解した状態、まだ台についているパーツもさらに分解でき、調整が可能です

ここまでの分解が日頃行うメンテナンスの範囲ですが、台についているパーツは全て分解出来、刃の位置調整が可能になっています。ここはフロッグと呼ばれるパーツで、別売りでは角度の異なったフロッグもあります。ブロック・プレーンのローアングルのように角度が低いものなど、木材に応じて使い分けることも可能です。このフロッグの調整にトライ・アンド・エラーが付きものですが、時間を掛けて自分に応じたツールに仕上げることが可能です。

 

Lie-Nielsen/Cabinet Maker’s Scraper
リー-ニールセン/キャビネット・メーカーズ・スクレーパー

側面
側面

ヴァイオリンの横板は杢が入り組んでいて鉋掛けが難しいのでスクレーパーに頼ることとなります。スクレーパーだと平面を出すことが難しいので和鉋の立鉋のようなスクレーパー・プレーンを使用しています。

後方から
後方から

一般の鉋と比較すると刃が前傾で取り付けられており、刃の角度も一般の鉋は25°に対してこれは45°で研がれています。スクレーパーとして堅牢な鉋で台も比較的長くなっています。

前方から
前方から

キャビネット・メーカーズと銘打っていますが、スクレーピング・プレーンでスクレーパーの役割を担います。安定したスクレーピングが可能で刃の厚みがしっかりしており、木肌は綺麗に仕上がります。

鉋屑
鉋屑

どの辺りがキャビネット・メーカーズなのかというと、ハンドルに仕掛けがあり、自由な角度で左右に倒すことが出来ます。

正面
正面

垂直の壁に邪魔されず、ギリギリまで仕上げを行える為のハンドル設定と、垂直壁の隅まで刃が当たるように刃が台のエッジまで出ている事が特徴でしょうか。
例えば、引き出しの内側の底面の仕上げなどにも対応できる仕様となっています。

ハンドルの角度が調整可
ハンドルの角度が調整可

ヴァイオリンの横板を薄くするだけとして使用するにはオーバー・スペックで持て余すこともありますが、台が長いため、安心して作業を進めることができています。一般的にはスクレーピング・プレーンはブロック・プレーンより小さめのものが多いのですが、本来はそちらを購入すべきだったと回想することもありますが。。。

 

Lie-Nielsen/Block Plane No.103&102&Violin Maker’s Plane No.101
リー-ニールセン/ブロック・プレーンNo.103/No.102/No.101

Lie-Nielsen Block Plane / No.103, No.102, No.101
Lie-Nielsen Block Plane / No.103, No.102, No.101

こちらもブロック・プレーンです。用途はスタンレイのブロック・プレーンと同じですが、作りの精度が良い事と刃も大切にしたいことから主に仕上げに使用しています。

とてもシンプルな構造で堅牢性が高く、スタンレイと比較すると部品点数も格段に少ないです。

上の画像では左端がNo.103で台がノーマルの角度。中央がNo.102でローアングルです。右端のNo.101はヴァイオリン・メーカーズと銘打っているように一回り小振りになっています。

分解時/刃表
分解時/刃表

刃の裏側の上部にはスロットが作られており、台側のスクリューに引掛かるようになっており、スクリューの回転で刃の出入れ調整を行います。

分解時/刃裏
分解時/刃裏

同じブロック・プレーンですが、スタンレイのそれと比較するとリー・ニールセンはひとまわり程小振りです。

比較
比較

上画像では白線で囲っている部分が、刃を押さえつけるパーツ「キャップ」を固定する部分ですが、リー・ニールセンは渡されたバーで固定しているのに対してスタンレイは丸ネジでキャップに付けられた穴を押さえています。

スタンレイの弱点はこのキャップの構造に問題があり、あまり好ましい印象を持つ事が出来ません。キャップの素材がアルミだからなのか、少しずつ穴が広がってしまってしっかりと押さえつけられなくなりつつ、、という状態です。

スタンレイのこのシリーズは過去モデルを復刻し、機構を刷新したシリーズという事ですが、このキャップ構造はレトロ感があるものの、実用的ではないようです。

シンプルで堅牢なリー・ニールセンはやはり良いですね。

高く出ている余分なライニングを削り、平らにする
No.101/ヴァイオリン・メーカーズ

No.101のヴァイオリン・メーカーズはリリース直後に早速入手し、非常に愛用しています。構造はNo.103, No.102と同じものでサイズが小さい事が特徴でしょうか。このサイズ、台の長さが非常に好都合で頻繁に活躍しています。

ヴァイオリンのパーツは小さなものが多いので通常のブロック・プレーンでは操舵性に不安定感がありますが、このNo.101は小さなパーツに対して安定した削りを掛けられます。