自然からの贈り物
楽器に用いられる木材。ことにヴァイオリン属には表板にスプルースが、そして横板、裏板、ネック~スクロールはメイプルが用いられています。
指板には黒檀が使われますし、フィッティングのペグやテールピース、顎あてには黒檀であったり、ローズウッド、柘植、その他の素材が用いられています。
もちろん、フィッティング類も楽器と同様に質は選び抜かれたものであることはお分かりかと思います(厳密には価格に反映されます)。
さて、スプルースは世界に種として約40種が確認されており、生育する気温、湿度、環境(陽当たりなど)、土壌、土地の高度、などの様々な条件で育ち方や性質が左右されます。つまり、
ヴァイオリンの伝統的な素材として適した木材を得ることが出來る場所は数える程度しかありません。

その限られた木材から更に楽器用として特定の部位を切り出します。この時点で、決して豊富ではないということは想像に難しくないと思います。
これはメイプル材も同様です。

パートナーである演奏している楽器はどこから来たのか。
工房で楽器となる前はとても長い時間を森で過ごしていたことに想いを馳せることもたまには良いかもしれません。また考えるととても感慨深いものです。
そして、なにより、同じ樹木で製材された木材でさえ、カットによって年輪も、繊維も、異ってしまうので、それぞれの木材が個性的であると言えます(このような木材は兄弟と表現されることもしばしばです)。
このような楽器に使用されることを前提とした木材はTONEWOODとよばれており、まさしく自然からのギフトです。