空いた時間でツールを作りました。
スクレイパーという道具がありますが、取手のないカンナのようなものだと考えてもらえればイメージしやすいと思います。
日本でスクレイパーというと壁や床の粘着物を剥がすためのヘラであったり、窓拭きの仕上げに使う長いゴムベラが一般的で、ヘラにあたります。Scrapeするものなので、文字通りこそげ落とすためのもの、つまりヘラです。
欧米では一般的なツールで、木工においては余分な木材をこそげ落とすための刃物になります。私はヴァイオリンを初めて作るまでは木工とは縁がなかったのでスクレイパーという道具の存在を知りもしなかったですし、どのようなものか想像もつきませんでした。教えてもらうまでの間に予備知識として調べても、金属の板で木材に当てて木材の表面を綺麗に削り取るものとしか分からず、金属の板で木を削ることができるのかは半信半疑でした。
その後、初めて使ったスクレイパーはヴァイオリン製作をはじめとする楽器製作用に市販されているものや大工道具のスクレイパーでしたが、実際に触って使用すると、とても単純なものだったので拍子抜けしたことを覚えています。ただ、単純ゆえに奥深いことも思い知らされることになったのです。

スクレイパーには刃がつけられていて、その刃先の角度は最適に変えられています。用途に合わせた形のスクレイパーを使用するのですが、最初の頃は刃を付けることに四苦八苦していたのです。市販のものだったので、最初はよく切れて使い勝手が良いのですが、刃が鈍ってくると、上手に研げないうちは研げていないまま使っていました。だんだん刃をつけられるようになると、使っているうちに、「こんな形のスクレイパーが欲しいな」と思うようになり、グラインダーの使い方を教えてもらって形成するようになりました。

ヴァイオリンは表面から裏面、ネックやスクロールに至るまで曲面がとても多く、どんなに小さなカンナやサンドペーパーでも限度があります。その向こうはスクレイパーの役割です。言い換えればスクレイパーで完成させているとも言えると感じました。スクレイパーを使いこなせれば、もっといいものが出来るのではないだろうかと考えるようになってからはスクレイパーの形についてよく考えることが増えました。
製作者ごとの使いやすい形があるので、スクレイパーを見せてもらったり、形を教えてもらったりすることはとても面白いと感じます。その度にヒントを得、普段のアイデアを留めて形にすることが楽しみになりました。
金属の加工は鉄粉が出るので少し厄介で、加工後には丁寧に掃除をしておかなければワークベンチなどいたるところから木部に入り込みます。その上、加工中の騒音がとても素晴らしいので、耳も痛いですし、近所に気を使ってしまいます(音漏れは大丈夫だとは思いますがやはり心配です)。
しばらくスクレイパー作りは気分が落ち着いていたのですが、これからスクロールに取り掛かるので気持ちを改めて、新しく作ることにしました。グラインダーを導入しようと考えていたのですが、鉄粉が広範囲に飛び散ることになるので、今まで通りの方法で加工です。



私は卓上ボール盤に軸付き砥石を取り付けて、端材の木材をレストにして支店を作っています。グラインダーは回転数も早く、自由に動かせるので作業スピードが速いですが、ボール盤を最大限に活用して工具は必要最低限にしています。
良い形が出来て満足していますが、今後、使いながら少しずつ削ってより最適な形にしていくことも楽しみのうちです。パーフェクトでオールマイティーなスクレイパーが完成できる日はやってくるのでしょうか??(笑)。