パートナーとなる楽器選びは楽しくも難しくて奥深いものです。
楽器のコンディションを確認したり操作性を確かめることはもちろん、自分が演奏してそばで聴く音色と第三者に演奏されているのを離れた距離で聴く音色も異なります。またどのような場所・環境で鳴らされているのかという事も大きな要因となります。
最後の決め手は感性が補ってくれることとなりますが。
気になる楽器を目の前にしたとき、普段通りに、思いのままに演奏して違いを楽しむことが出来れば、最も良い状態で判断できることと思います。しかしなかなか判断がつかない、もう少し踏み込みたいというときはシンプルに弾いてみることが良い場合もあります。
- 開放弦からスタート。チューニングの音色を聴き、軽いタッチで開放弦を演奏。それからダイナミクス・強弱をつけた演奏で開放弦を確認
- ヴィブラートなしで音階を低音から高音までゆっくりと演奏
- 一つの弦、ダブルストップ、ハーモニクスなどで音色の芯と透明感を確認
楽器の品質や好ましい音色が出せているのかをより深く理解するために以下のレパートリーを試してみても良いかもしれません。
これらのレパートリーは確定的なものでもありませんし、全てを網羅しているというわけではありません。
それでも多くの奏者が判断するために演奏されることがあります。
もちろん、これらはご参考までに捉えていただき、ご自身で判断に役立つ作品やパッセージがある場合はそれをお試しください。
ヴァイオリン
- チャイコフスキー: ヴァイオリン協奏曲第1楽章の最初の2行
各弦に渡りレスポンスの均一性がわかりやすいパッセージです - モーツァルト: ヴァイオリン協奏曲5番の第2楽章
音色の変化を判断しやすい作品です - ブルッフ: ヴァイオリン協奏曲
ダブル・ストップ、トリプル・ストップに有用です - パガニーニ: Moto Perpetuo「無窮動」
- カミーユ・サン=サーンス: Introduction et Rondo capriccioso en la mineur「序奏とロンド・カプリチオーソ」
この2つは速いパッセージなので楽器のレスポンスと演奏の快適さが現れます - メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲第1楽章
音色の伸びやかさと速いパッセージの演奏性を確かめることができます


ヴィオラ
- シューベルト: アルペジョーネとピアノのためのソナタ イ短調 D821のオープニング
- バルトーク: ヴィオラ協奏曲第2楽章
- ブロッホ: ヴィオラと管弦楽のための組曲
- ブラームス: アルト、ヴィオラとピアノのための2つの歌 Op. 91の最初のフレーズ
- ベートーベン: 弦楽四重奏曲第9番 ハ長調 「ラズモフスキー第3番」 Op. 59, No. 3
- ウォルトン: ヴィオラ協奏曲
速い曲調で楽器のレスポンスを試すことができます
チェロ
- バッハ: 無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード
各弦にわたるレスポンスの均一性が判断しやすい作品です - ハイドン: チェロ協奏曲第1番第1楽章
音色の生き生きさとレスポンスを確かめることができます - ブラームス: チェロソナタ第1番Op.38
音色の豊かさ、深み、暖かさのクオリティが現れます - ブロッホ: ヘブライ狂詩曲『シェロモ』のオープニング
A線の確認に - ラロ: チェロ協奏曲
- エルガー: チェロ協奏曲
この2曲のオープニングはソロとしての低音域における音色のクオリティを確認できます - ストラウス: ドン・キホーテ (交響詩)
全音域のレスポンスを確認できます - カミーユ・サン=サーンス: 白鳥
レガートで楽器の声色(こわいろ)の美しさが現れます - ダヴィドフ: 噴水のほとりで
- ウェーバー: ピアティゴルスキー編 「アダージョとロンド」
速い小品はレガートとスピッカートのレスポンスを確かめることができます
新しい楽器の試奏のみならず、日常における愛器のご確認や新しい弦にトライした際などにも適していると思いますので、ご参考にしていただけますと幸いです。