コルフカーレスト”Model 2”の使い方

ピラストロ社から発表されているコルフカーレストは曲げることができる木材(メイプル)の肩当てという特徴があり、軽量である事からも使用感が良く、音の振動を妨げにくいようにデザインされています。

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最新のコルフカーレスト、”Model 2”ではエルゴパックというパーツのセットが同梱されています。
2種のジョイントから構成されているパックですが、これらをコルフカーレストの脚に組み合わせる事で位置調整の自由度が高まり、多くのニーズに応えられる設計となっています。

コルフカーレストのみで使用する方法と、エルゴパックをコルフカーレストへ取り付ける方法、そしてエルゴパックで実現できるポジションのバリエーションを画像と共にお伝えいたします。

コルフカーレストのみで使用する場合
箱からコルフカーレストを取り出した状態ではエルゴパックが組み付けられていない状態となっており、そのままの状態で使用できるようになっています。

コルフカーレストの本体にはPirastro KorfkarRestと刻まれているのですが、この部分が実際に使用する際に肩側(G線側)となります。反対側は胸側(E線側)です。

shoulder

コルフカーレストを使用する場合に限らずどの肩当てにも言える事ですが、ヴァイオリンを掴むグリップの4点が平面に接触するようになっているかを常に確認します。この状態でヴァイオリンへ適切な角度で取り付ける事が出来るようになり、特にコルフカーレストの場合は木部本体を曲げて調整した場合でも歪みが生じにくくなります。

コルフカーレストの場合は脚に関節があり、自由に角度を変える事が出来るため、少しの角度調整でグリップの角度も変わります。そのため、この平面に4点を接地させる事はとても重要で、調整を施す場合にも最終的には4点を接地させた状態でスクリューを固定すると容易になります。

hole

ヴァイオリンに合わせてグリップの向き調整をする場合は本体のスクリューを緩めて調整します。スクリューの位置は下の画像のようにパッド内にあります。

woodscrew

木部本体のスクリューを付属のトルクス・レンチで緩めて希望の角度に調整します。向きが決まればスクリューを締めて固定します。

screw

脚にも関節があるので角度を変えることによってヴァイオリンの幅に合わせることや、取り付け位置を変更することも可能です。こちらもスクリューを緩めて調節したのちにしっかりと締めて固定させてください。

leg

グリップの4点を接地させた状態で固定するコツは、ヴァイオリンの幅とヴァイオリンへの取り付け位置にグリップの向きを合わせ、全てのスクリューを軽く緩めた状態で平面上に置く事です。そしてづリップの4点が平面に接地するよう微調整しながらスクリューを締めてゆくと比較的簡単にセッティングできます。慣れてくると、どの関節がどのように動くのかがわかるようになり、優先させたい脚を基準に他方を調整する事も簡単に出来るようになります。

このようにグリップの向きを変えたり足の角度を調整したりという事が可能です。一般的な肩当てで出来る事ですが、コルフカーレストは本体を身体にフィットさせられるように曲げる事が出来るので一線を画する肩当てであることは間違いありません。ただ、曲げられる範囲があるので、軽く曲げるという印象が妥当に感じています。

もちろん、極限までの軽量化と音響的に考慮されたデザインという事も特筆すべき点とも言えます。軽量さについては手に持っていても、持っていないかのような重量感に感じられます。

ご参考までにViva La Musicaの肩当ては66.78gで、コルフカーレスト”Model 2″エルゴパック組込では34.08gとなっています。

 

 

本体の曲線美はもちろん脚部のパーツが良い質感なのでエレガンスさも感じる事が出来ます。

“Model 2 “には脚部の関節を増やすエルゴパックが同梱されており、このエルゴパックによってコルフカーレストはさらに昇華されたものとなりました。

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エルゴパックを使用する場合
まず、エルゴパックでできる事を整理します。
1. 幅の狭いヴァイオリンへ合わせるために肩当ての脚を内側に向ける
2. 肩当ての脚を伸ばす
3. 肩当てと身体の距離を近くする
4. 肩当ての胸側部分を低くする
5. 肩当てが肩の真上近くになるように位置を変える
これら5つがピラストロ社が提案しているエルゴパックの主な利用方法ですが、ジョイントのセッティングを僅かに変えたり、ジョイントの使い方をミックスしてみたりと可能性は広がります。
まずは上記の5点を一通り試して、少しづつ角度調整を行いながらベストなセッティングを探してゆくと、コルフカーレストを使いこなす近道となるのではないでしょうか。

そのような視点から、上記の5つに焦点を当てたいと思います。
この5つを試す中で、使い勝手や調整方法を実感出来るようになり応用力も高まると思います。

エルゴパック
まずはエルゴパックの各パーツと使用するパーツの確認です。
ジョイントは2種類あり、フラット型とバレル型があります。フラット状ではないほうがバレル型なので判断は容易です。次の画像では左側のジョイントがフラット型で右側のジョイントがバレル型です。

スクリューは2本同梱されており、既に脚に取り付けられているスクリューと併せて使用します。こちらは予備のスクリューが同梱されておりませんので紛失にはご注意ください。

他の同梱品としてロッキング・リングと呼ばれるサンドペーパーで作られたような紙製のワッシャーが6枚含まれています。6枚のうちエルゴパックに使用するのは両脚の2枚です。残りの4枚は消耗と紛失の場合に備えた予備となりますので大切に保管します。

pack

ネジを差し込む
これらのジョイントにはそれぞれネジを差し込むための穴があるのですが、ネジ穴が平らになっている穴とそうでは無い穴の2つがあります。
ネジ穴が平らになっている方の穴にネジ山が収まるようにしてネジを使用します。穴が空いているだけのネジ穴は反対側からネジを差し込む為の穴なのでこの点に注意します。

screwholes

注意点
ジョイントを組み合わせてネジ止めする際にはパーツの間にロッキング・リングを挟む事をお忘れないようにご注意ください。
ロッキング・リングはザラザラした紙のようなワッシャーで、パーツ間の隙間を埋めるスペーサーの役割と滑り止めの役割を担っています。
ロッキング・リングを挟んでいないとジョイント同士が固定されず、ネジを最後まで締めても固定されません。

同梱されているロッキング・リングは予備を含めて6枚あります。消耗した場合や調整中に破損・紛失する場合も考えられますので大切に保管しておくと安心です。

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ここからはエルゴパックを使用してゆきます。

1: 幅の狭いヴァイオリンへ合わせるために肩当ての脚を内側に向ける
幅の狭いヴァイオリンにコルフカーレストをしっかりと固定させるためにエルゴパックを用いて脚を内側に向ける方法です。
肩側にフラット型ジョイントを取り付け、胸側にバレル型ジョイントを取り付け、それぞれ本体のネジを緩めてジョイントが内側に向くように調整し、ネジを締めます。ジョイントの角度を調整してネジを締めます。

 

 

 

 

下の画像のように両脚の軸が内側に寄っている状態となります。エルゴパックを使わず脚を内側に向ける事も可能ですが、幅によってはグリップの角度が急なものとなってしまい適切なグリップができない場合があります。エルゴパックを使用する事で幅の狭いヴァイオリンでもしっかりとグリップ出来るようになります。

下の画像では分かりやすいように最も内側に寄せている状態です。各ジョイントの角度を緩くしたり、グリップの脚を回転させて伸ばしたりするとヴァイオリンの幅に合わせることが出来ます。

1

 

2: 肩当ての脚を伸ばす
これはエルゴパックのジョイントをそれぞれ縦方向に伸ばした状態にします。胸側にフラット型を使用し、このジョイントを伸ばします。肩側にはバレル型を使用して高さを調整します。

 

 

 

 

一般的な肩当てと同様にグリップを回転させると脚が伸び縮みしますが、エルゴパックを使って脚を伸ばす事もできます。

2

 

3: 肩当てと身体の距離を近くする
楽器と身体の距離を近くする場合、エルゴパックのジョイントの方向を楽器のネック側に向けるように調整します。肩当ての脚はヴァイオリンをしっかりとグリップしたままヴァイオリンを身体に近づける事ができます。これは肩側にバレル型を使用し、胸側にフラット型を使用します。

 

 

 

 

ヴァイオリンをグリップしている脚を軸として肩当てが身体の方へ寄ります。肩当てが身体に近くなるので左腕の動きに自由さを得られます。

3

 

4: 肩当ての胸側部分を低くする
ヴァイオリンを胸側に寄せたい場合は肩側にフラット型を使用し、胸側にバレルを使用し。本体のネジを緩めてエルゴパックのジョイント双方がG線方向に向くように調整します。

 

 

 

 

脚の軸に対してコルフカーレスト本体が胸側(E線側)に寄ります。

4

 

5: 肩当てが肩の真上近くになるように位置を変える
ヴァイオリンを肩側に寄せたい場合は肩側にフラット型を使用し、胸側にバレルを使用します。本体のネジを緩めてエルゴパックのジョイント双方がE線方向に向くように調整します。

 

 

 

 

脚の軸に対してコルフカーレスト本体が肩側(G線側)に寄ります。このメリットは左腕の自由度が高まる点です。

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エルゴパックの使用例を5つのポイントからご紹介しましたが、脚の軸に対してコルフカーレスト本体を前後左右に動かす事が出来るという事をご理解いただけましたでしょうか。これがエルゴパックの特色です。

 

 

肩当てを基準として考えれば、ヴァイオリンの位置を前後左右に動かすことが出来るのでヴァイオリンと身体の安定した関係を見つけることが出来るようになります。

セッティング方法に慣れてくれば上記の5つを基にして角度を変えたり、より良いフィット感を見つける事も出来ます。

今回は基本となる前後左右のご紹介でしたが、本体に接続しているジョイントを回転させる事で360度の中から最適なポジションを探すことが出来ます。

いずれの調整においても、少し角度を変えるとグリップの4点が平面に接地しなくなるので、この点についてはご注意ください。

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改めて調整のコツをお伝えします。

コルフカーレスト本体のジョイント、エルゴパックのジョイント、そしてグリップの向きをある程度調整し、大体の角度を決めてから一旦、各スクリューを軽く緩めます。その状態でグリップを下にして平面上に置いて、4点が接地する状態へ微調整します。そのポジションを維持しながら全てのスクリューを締めてゆくという方法です。

コルフカーレストをご愛用されている方々、そしてこれからコルフカーレストを手にする方々のご参考になれば幸いです。

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